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「欧州における統一特許と統一特許裁判所」

2023.03.15

欧州特許制度において大きな変革を迎えており、本年6月より、統一特許および統一裁判所を導入する協定が施行されます。
これまで欧州特許の取得の際には、保護を求める国に対して個別に移行手続を行うことにより当該国で保護されていましたが、統一特許の施行により、個別の移行手続を行うことなく、協定に批准した全ての国で保護されることになります。
統一特許に対しては、侵害や権利の有効性などの争いは統一特許裁判所の管轄になります。従来では各国ごとに訴訟提起がなされ、その判断が他の国へ直接的に影響を及ぼすものではありませんでした。しかし、統一特許裁判所の判断は、協定に批准した全ての国に影響を及ぼすことになります。手続が簡便になり訴訟コストが下がることが見込まれる等のメリットがある一方、権利者にとって不利な判断が下された場合、例えば、権利無効とされた場合には、全ての国で保護を受けられなくなるデメリットもあります。
そして、既登録の欧州特許についても、自動的に統一特許裁判所の管轄へ移ることになり、上記のメリット、デメリットが生じることになります。
このデメリットへの対応策として、施行からの猶予期間(7年間の予定)は統一特許裁判所の管轄を排除(オプトアウト)し、従来通り各国の裁判所ごとで争うことも選択できます。ただし、オプトアウトは猶予期間であっても、訴訟提起された後はできないことに注意が必要です。

(日本弁理士会中国会 弁理士 W.S)