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「意匠権による権利の取得」

2023.08.30

発明を出願したいとの依頼(本案)があると先行技術調査をします。調査結果によると、特許出願よりも意匠登録出願で出願した方が権利を取得しやすいと思われる場合があります。本案の技術的な特徴では進歩性の要件をクリアするのが難しいが、本案の形態は斬新で類似のものが他にないように思われる場合です。同類の物品区分で意外と意匠登録が少ないこともあります。
ところで、意匠登録出願をした案件で最近困った問題に遭遇しました。そもそも特許権や意匠権等の権利はなぜ取得するかという問題です。一般的には本案の特徴のうち他の登録意匠にない形態を中心にして図面化します。
しかしながら、意匠権は類似の範囲に及ぶと言われてもその範囲は明確でなく、複数件の形態の出願を提案するのは大企業ならいざ知らず一般に難しいところがあります。意匠の場合は、発明の場合のように特許請求の範囲の請求項を増やして対応するようなことができません。
本案は、斬新的な形態をしており登録査定されましたが、意匠登録の数年後、類似の商品が多々出回っておるのでなんとかできないかとの依頼がありました。例示された類似の商品は、確かに用途は同等であるが、機能・形態が異なります。特に広く出回っている商品は、デザインを重視したような形態をしており、本案に類似するとはとてもいえません。なかでも警告できると思われるものであっても、本案に類似するが、自作した物をインターネット上で作成手順を紹介したものであり、「業としての実施」が不明確な点があります。これらについて説明すると、「信頼して依頼したのに、何のための出願だ!」。

日本弁理士会中国会 弁理士 鶴亀 國康