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中国会はっぴょん 知財コラム

「国内優先権制度のご案内」

2019.01.09

 明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 さて、すでに特許出願した内容に、改良発明の構成や、「本発明は○○という有利な効果を発揮できる。」という一文を追加する補正ができないか?といったご質問を受けることがあります。このような場合、「新しい事項を追加する補正は認められていませんので、残念ですが、できません。」といった回答になることがほとんどです。その理由は、補正が認められればその内容は出願時に記載されていたものとされることと、特許は原則早い者勝ち(出願日を基準に権利を付与する先願主義)であることから、出願後にいくらでも追加できるとなると、後の出願人に不測の不利益が発生するおそれがあるからです。
 しかし、上記のような改良発明を追加したい場合には、国内優先権制度を利用して新たな出願をすることができます。一例として、先の出願に発明A,Bが記載されているとき、後の出願では発明A,B,C(Cが追加発明)を記載することが可能です。なお、先の出願は、その出願日から1年4月経過時に取り下げとなるため、出願審査請求は後の出願のみについて行うことになります。
 後の出願では、発明A,Bについては、先の出願時を基準として、発明Cについては後の出願時を基準として、それぞれ特許性が判断されます。そのため、他人が先の出願日と後の出願日の間に発明A,Bを出願しても、この出願によって後の出願が拒絶とはなりませんので、先の出願人が優先的に特許を得られる可能性があります。一方で、他人が上記の間に発明Cを出願すると、この発明Cによって後の出願は拒絶となる可能性が出てきます。すなわち、他人にとって不公平にもなりません。
 ただし、国内優先権制度を利用するには、先の出願日から原則1年以内に後の出願をする必要がありますので、この点につきご留意ください。

(日本弁理士会中国会 弁理士 金井 一美)