「秘密保持と知財相談」
2019.06.05
特許このコラムでも取り上げたと思いますが、特許取得には、二つのハードル「新規性」と「進歩性」があり、新規性は発明者であるなしにかかわらず、出願前に守秘義務の無い人にオープンにするとアウト、という大原則があります。一方、近年では、各種製品は一貫した自社生産でないのが普通です。たとえば、発明品の効果を調べるため、試作品を外注して作ってもらうこともあります。しかし、上記原則を適用すると、外注した時点でアウトとなってしまいます。
どうすればよいかというと、相手に守秘義務を負わせればよく、要は予め契約をして守秘義務のある関係とした上で外注したり開示したりすればよいのです。「これ特許出すから出願するまで黙っといてね」という口約束でもいいのですが、もめたときに証明力に劣りますので、秘密保持契約や覚書などを交わしておくと良いと思います。
少し話がそれますが、このような契約に関するおおもとの法律は「民法」です。この民法を起草した人は島根県松江市ご出身の梅謙次郎先生です。空前絶後の偉大な法学者なのですが、松江市立図書館の入口にレリーフがあるばかりで、松江の方もあまりご存じなく残念です。法政大学設立にも貢献されました。小泉八雲の妻セツさんの親戚で、八雲は遺言を託しています。
さて、特許や商標を取得する場合、所定の方式に従って書類を整え特許庁に提出して審査してもらいます。特許事務所などにお世話にならなくても自分でも当然のことですが出願できます。ただし、専門性が高いので、上記の新規性の留意点のほか、事前にいろいろ知っておく必要があります。しかし、どこにまず相談すればよいか入り口部分で迷うものです。ここで役に立つのが無料相談会です。
弁理士会中国会でも常設無料相談会を開催しています(毎週水曜日:要予約)。このほか、各県の発明協会が実施しております。もちろんいずれも守秘義務がありますのでご安心下さい。セカンドオピニオンを求め、異なる相談員(弁理士)から意見を聞くのも利用方法の一つかと思います。
(日本弁理士会中国会 弁理士 田辺義博)