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「タイムマシンという発明」

2024.05.20

この春「不適切にもほどがある!」というドラマが放送されました。昭和末期の 1986 年から 2024 年にタイムスリップした体育教師小川市郎(阿部サダヲ)が、現代社会に戸惑いながらも、コンプライアンスに縛られた現代と「何でもあり」の昭和の双方に警鐘を鳴らすというタイムスリップコメディーです。ちょうど私が社会人になった頃から現代にタイムスリップしているので、昔のことを懐かしく思い出しながら観ることができました。
社会的なテーマのドラマなのですが、凝った笑いがテクニカルにちりばめられた人情味あふれるストーリーに引き込まれ、市郎の娘で不良女子高生の純子(河合優実)が反発しながらも父親を思いやる姿に心を打たれました。いやはや、朝ドラの「あまちゃん」以来久しぶりに宮藤官九郎の脚本に脱帽です。
さて、特許制度は、新しく完成した発明を秘匿せずに最初に公開した者に対して、その見返りとして独占権を与える制度であり、新しい技術が速やかに世の中に提供されることにより技術革新が促進されます。一方、既に公知になっている発明は社会に新しい技術を提供することができないので、これに独占権を与える価値がありません。このように、発明が特許されるためには「新規性」が求められます。
けれども、タイムマシンの出現によって、将来どのような特許出願がなされどのような技術が普及するのかわかるようになれば、新規性を有する発明がなくなって、特許制度は崩壊します。そして将来の技術が分かってしまえば、もはや誰も研究開発をしなくなるので、世の中の技術革新はそこで永遠に止まってしまうかもしれません。タイムマシンは凄い技術革新だけど、その存在がそれ以降の技術の進歩を止めてしまうのだったらそれはまた何とも皮肉な話だな、などと思いを巡らせつつも、「はて、不良女子高生のスカートが長い方から短い方に方向転換したのはいつ頃だったっけ」などと考えたりもしたのでした。

日本弁理士会中国会 弁理士 中務 茂樹