「プログラムと知的財産権」
2019.10.16
特許今年の夏、「プログラムと知的財産権」について高専で講義を行いました。コンピュータや情報処理を学ばれている学生さん達にとっては、プログラムを作成することも勉強の一部なので、プログラムがどの様に知的財産権で保護されているか、また、他人のプログラムとの関係で知的財産権の侵害となるのではないかについて興味があったようです。
プログラムについて明文の規定があるのは、特許法と著作権法です。
「プログラム」は、特許法第2条第4項に、「電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。」と規定されています。
また、著作権法第2条第1項第10の2号に、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。」と規定されています。
特許法も著作権法も、似通った内容ですが、著作権法の「表現したもの」という要件が重要な意味を持っています。
特許法における侵害の判断は、権利者側の「特許請求の範囲」に抽象的に記載された指令等の組合せと、侵害したとされた側の指令等の組合せの内容で、判断されます。
しかしながら、著作権法における侵害の判断は、権利者側と侵害したとされた側相互のプログラムについて、プログラム言語で記載されている具体的な表現の異同を比較して、判断されます。
この場合に、相互のプログラムに共通した部分があっても、プログラム言語の提供者が予め用意している表現や、ありふれた表現については、除かれて判断されますので、裁判において、プログラムの著作権侵害が認められるケースは少なくなります。
このようなことや、依拠性の要件を説明すると、プログラムを作成する時は似通った表現にならざるを得ないこともあり、丸写しする場合は別として、著作権侵害には成り難いことを理解していただけたようでした。
(日本弁理士会中国会 弁理士 木村 正彦)