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「似ているようで結構違う?特許と実用新案」

2019.12.18

 知的財産=特・実・意・商+著+不競法+植物新品種ですが、技術を保護する場合には、特許と実用新案の二つがあります。両者は独占排他権なので当然バッティングしてはならず、技術を保護する場合には、特許と実用新案のどちらか一方で出願する必要があります(両方出願すると拒絶されます)。一方、同じ物であっても、技術的保護とデザイン的保護とは観点が異なりますので併存可能です。例えば、ナイフの握り部分を手になじむ形状としたときは、保持力向上という技術的観点から特許(または実用新案)、見た目の美しさというデザイン的観点から意匠、両方の出願が可能です。
 では、特許と実用新案は何が異なるでしょうか。まず、出願件数をいいますと、特許が年間35万件であるのに対して、実用新案が1万件です。出願件数は権利の使い勝手の良さを反映した結果、と捉えますと、実勢は特許に軍配が上がっています。昭和50年代の半ばまで実用新案の出願件数の方が特許出願件数より多かったのですが、平成になって実用新案法が大改正され、使いにくい権利になってしまいました。特許だと認めてもらえないが、実用新案だと認めてもらえる、すなわち、「新規性・進歩性といった実体的要件の判断が実用新案の方がハードルが低い」と認識されている方が結構いらっしゃいますがこれは全くの誤りで、審査のハードルに違いはありません。実用新案の出願件数が以前は特許以上にあったことと、審査ハードルが低いという間違った認識が相まって、ある程度の年齢以上の方に一種の実用新案信仰がありますが、法制も大いに変わっていますので留意してください。ポイントは、実用新案は、方法が保護されない、権利期間が特許の半分の10年、出願から2ヶ月程度で登録されるものの権利行使の際など後付けで事実上の審査が必要となる、などです。とは言え、類似品が出るようなことなく何も波風が立たなければ、実用新案は出願さえすれば基本的に10年間独占権が発生するわけですので、必ずしも登録されない特許より魅力的な側面もあろうかと思います。

(日本弁理士会中国会 弁理士 田辺 義博)