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中国会はっぴょん 知財コラム

「役に立つ技術」

2024.10.23

20世紀後半にオゾン層破壊が問題とされました。幸いなことに、国連の報告書によれば2066年ごろにはオゾン層がすべて回復する可能性も指摘されているそうです。1982年から1985年頃にオゾンホールが発見され、1987年にはモントリオール議定書が採択されて、オゾン層を破壊するクロロフルオロカーボン(フロンガス)の使用を段階的に制限することが合意されました。こうした国際的かつ迅速な取り組みが功を奏した結果と思われます。また、フロンガスに代替する冷媒ガスの開発に携わった企業の努力と技術の貢献も忘れてはならないと思います。
2010年代後半にはある日本企業が、ある冷媒を使用した機器に関する特許400件余りを無償で開放しました。その冷媒は従来の冷媒に比べて地球温暖化係数が約3の1とのことです。同社が特許権を解放した後、その冷媒を採用したエアコンが世界中に普及し、その冷媒を採用した空調機の販売台数が順調に伸びているそうです。同社は、解放した特許権以外にも、他社の空調機と差別化できる特許権を保有しており、差別化用の特許権に基づいて、競争力を維持しているともいわれています。すなわち、一部の特許権を開放することで市場を広げて、解放しなかった特許権で差別化要素を維持するオープンクローズ戦略です。世の役に立つ技術を普及させつつ、収益をあげてさらなる企業活動・社会貢献の原資とする、という一例ではないかと思います。
昨今の気候変動によると思われる災害の激甚化の原因については諸説あるようですが、特許制度と環境技術が問題解決の一助となることを期待します。

日本弁理士会中国会 弁理士 田中 秀明