「実用新案登録出願の活用について」
2020.06.03
その他ソフトウェアに関する技術について権利取得を希望する場合、実用新案登録出願ではなく特許出願によって対応するのが一般的です。これは、特許法が第2条第3項第1号において「物(プログラム等を含む)の発明」と規定しているのに対して、実用新案法にはそのような規定が存在しないためです。
しかし、このような技術について実用新案権がまったく取得できないかといれば、そうではなく、サーバその他のコンピュータや、サーバと該サーバと通信可能な一又は複数の通信端末とから構成されたシステムについては、特許権のみならず、実用新案権を取得することも可能であり、このような実用新案権は過去及び現在において数多く存在しています。
また、実用新案権は、権利行使の段階では制約があるものの、特許権と比べて、権利の取得までに要する時間が短く、費用も安く、手間も掛からないというメリットがあります。このため、ソフトウェア技術に関するサービスや製品の売上や利益の見通しが立たない段階で出願する必要性が生じたとき、取り敢えず実用新案登録出願によって対応することも1つの有効な手段になる場合があります。
また、実用新案権は、その出願から3年以内であれば、その登録に基づいて特許出願を行うことが可能です。このため、事後的に特許権の取得が必要になったような場合にも柔軟に対応することが可能です。
(日本弁理士会中国会 弁理士 河野 生吾 )