知財コラム

「コロナ禍での知的創造活動」

昨年末に発生した新型コロナウィルスは、今年に入り世界中で感染が拡大し、世界経済に深刻なダメージを与えるとともに、人々の生活様式を一変させることになりました。コロナ禍において経済活動は顕著に低迷しています。では、発明などの知的創造活動も同様に低迷しているのでしょうか?
特許庁発表の統計※によると、昨年と比べ今年の特許出願件数はたしかに減っており、特に 4 月、5 月に著しい減少を示しています。これは緊急事態宣言発令による行動制限により、従来の働き方が大きく影響を受け、特許出願に繋がる企業活動が滞ったことが一因と推察されます。
その一方、特許出願件数の減少とは対照的に、実用新案の出願件数は大きく増加しました。緊急事態宣言下の 4 月、5 月でも前年同月比で 10以上増加しており、それが明けた 6 月は前年同月比で 25増加しています。
この傾向の違いは何を意味するのでしょうか?特許出願の多くは大企業によってなされます。一方、実用新案は主に小規模事業者、個人発明家などに利用されています。すなわち、コロナ禍での行動制限により企業活動が低調であっても、個人レベルでの知的創造活動への意欲は低下してはいない、といえます。これは私の皮膚感覚とも合致しています。「出張も飲み会も減って時間ができたので、新製品のアイ デアを考えてばかりいる」方や、「自分の創意工夫でこの社会の状況を打破したい」方が、ご相談にみえるケースが増えています。
人と会うことができなくても知的創造活動は継続することができます。知的創造活動の成果が見えるのには時間がかかりますが、将来のために、今は行動を制限しても、知的創造活動を制限してはなりません。この困難な状況をチャンスに転じることができるのは知財なのです。

※特許出願等統計速報令和 2 年 6 月分
https://www.jpo.go.jp/resources/statistics/syutugan_toukei_sokuho/document/index/202006_ sokuho.pdf

(日本弁理士会中国会 弁理士 川角 栄二 )

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