知財コラム

「近時の標準必須特許に関する欧州最新判例と我が国知財法政策への示唆」

実務上の注目を集めている標準必須特許(以下、「SEP」)の濫用的な権利行使について特に欧州では、既にハーウェイ対ZTE事件(2015)にて欧州司法裁判所が、「ライセンスを受ける意思」と「誠実な交渉態度」を基準として権利行使の是非を判断すべきとする所謂「ハーウェイ・ルール」による基本的な法的判断枠組みを提示しています。
近時これに続き英国においては、イングランド・ウエールズ高等法院に係属した 2017 年のアンワイアド・プラネット対ハーウェイ事件(2017)において、SEP権利行使に関する法的判断フレームワークの個別運用のあり方につき「比較ライセンス・アプローチ」を軸とした枠組みが示されました。さらに本年 2020 年 8 月には、ハーウェイ社による上告を受けた英国最高裁判所による判決がなされ、SEP保持者が提示すべきFRANDライセンス条件における「非差別性」原則 を極めて厳密に解する所謂「ハードエッジ・アプローチ」については、特許権者 に対して著しく過酷に過ぎるとの慎重な判断を示し、下級審たるイングランド・ ウエールズ高等法院による個別運用枠組みを維持すべきことが再確認されています。
他方で対照的に独国においては、2017 年 3 月のシスベル対ハイアール事件(2017) にてデュッセルドルフ上級地方裁判所が、SEP保持者が提示すべき「非差別性」 原則の解釈につき極めて厳格な基準を示す「ハードエッジ・アプローチ」を新た に採用し、「ハーウェイ・ルール」運用に係る独自の見解を判示しました。しかし ながらこれに対し、その上告審たる本年 2020 年 5 月の連邦通常裁判所判決では、 むしろSEP実施者サイドの交渉態度と「ライセンスを受ける意思」の存否につ き厳格な判断基準を維持すべき旨を判示しています。かかる近時判決により独国 裁判所も厳密な「ハードエッジ・アプローチ」からは距離を置くこととなり、「ハ ーウェイ・ルール」の個別運用方針にて適切なバランスが回復されたものと評価 されます。
今後とも欧州各国でのSEP行使に係る「ハーウェイ・ルール」個別運用の動 向を注視するとともに、我が国の関係判例と各種ガイドラインのあり方に適切な フィードバックが望まれるものと考えられます。

(日本弁理士会中国会 弁理士 竹内誠也 )

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