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中国会はっぴょん 知財コラム

「店舗名の保護」

2021.06.07

最近、両手鍋の持ち手が壊れ、どうもうまく直せないので、買い換えようと思うのですが、量販店にいってもなかなか気に入るのが見つかりません。良くも悪くもというか悪くも悪くも、使い捨て、部分が壊れても買換えの方が安上がりの時代ですので、外国産の安いものが多種置いてあります。しかし、鍋なども10年は持つので、多少値が張ろうとも、国産の=しっかりしたものを買おうと思いますが、なかなか見あたりません。最近は、私のような消費者が増えたのか、ラベルに大きく「日本製」と書いてあるものを見かけるようになりました。
量販店は安さが売りですが、商品知識やアドバイスを得られる小売店は(残念ながら寂れる傾向にはあるものの)やはりしっかりした買物ができます。子供の時分には、小売店が連なった商店街に夏になると土曜夜市という市がたち、とてもわくわくしたものです。氷柱花など、今頃の若い方はおわかりになるのでしょうか。
このような商売に関しては、平成18年に小売役務商標制度というものが導入され、小売役務(こうりえきむ)として店名・のれん名を商標登録ができるようになりました(以前はできませんでした)。背景としては、インターネット上でも商品販売する場合の店舗名の保護の充実を図るため、また、諸外国ではすでに小売役務が導入されており国際調和を図るためであり、小売に際して用いている店名を役務としてすなわちサービスの名称として保護できるようにしたのです。
魚屋、服屋、のように、扱う商品が限定的である、いわゆる特定小売と称される場合は、さほど手続は難しくはありませんが、百貨店のような何でも扱っている、いわゆる総合小売の場合は、特許庁に取引資料などの各種の資料を提出する必要があり、少し手間がかかります。
小売役務の留意点としては、次の二つがあります。
1)まだ制度導入されてから裁判例がほとんどなく、どこまで保護の実効性が図れているかよく分からない点(とはいえ、ある程度商いの規模が大きい場合やインターネット販売をしているのであれば、商標取得していて悪い方向には転ばないはずです)。
2)全国に多数同名の店があり、他人に商標を先取された場合、侵害といわれるか否か=店名変更しなければならないか、という懸念があります。これについては、他者の出願前からその店名を使っているのであれば、そのまま継続使用が認められるので、安心いただけると思います。なお、総合小売の出願書類の役務(サービス名)の表記は「食料品・飲食料品
及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」です。何をいっているのか分かり難いですね。
小売役務に限らず役務商標は、弁理士に出願依頼するのがベストだと思います。

(日本弁理士会中国会 弁理士 田辺 義博 )