「発明・権利の活用(2)」
2021.06.23
特許発明の活用又は権利の活用において中小企業の大企業に対する問題に関し、考えさせられることがありました。かかる問題は、近年問題になっており、公正取引委員会においては、「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査(令和元年6月14日)」がなされています。この実態調査によると、「ノウハウの開示を強要される、名ばかりの共同研究を強いられる、特許出願に干渉される、知的財産権の無償譲渡を強要される等のこれまであまり知られてこなかった多数の事例が報告された。」とあります。本件は特許出願に干渉されるに該当し、特許権が成立した後は自社で設計し下請け他社で生産するなど問題になっています。弁護士の見解は、権利者が何をしたいかであり、その要望に対応するとのことです。しかし、訴訟に持ち込めば重要な顧客を失う恐れがあるところ、弁理士としてどんな対応が出来るか悩ましいところです。上記設計品は、僅かな差異はあるが権利範囲に属します。共願の申し出があっても原則共願者は何でも出来ますので拒否して下さい等の見解ではなかなか役に立ちません。しかしながら、弁理士として役立ったかなと思うことが1つ有ります。
試作品が顧客間で使用される事態が想定されるので、出願時に新規性喪失の例外適用を行ったことです。後日、当該企業から当社の指示に基づいた発明は共願にしてもらいたいという要望について、その指示が出願後であることを新規性の喪失の例外証明書により証明できたからです。
(日本弁理士会中国会 弁理士 鶴亀 國康)