知財コラム

「革新特許」

皆さんは、革新特許制度をご存じですか?これは、オーストラリアにおけるイノベーション特許(innovation patent)という制度で、日本の実用新案に対応する制度なんです。日本語に訳すと革新特許ですね。皆さんは、”革新特許”という表題を見たとき、最初どう思われましたか?私は、「オーストラリアって、通常の特許よりもすごい発明を保護する規定があるのかな?」と思ってしまいました(笑)。この制度の登録基準は、皆さんがよく目にする「進歩性(inventivestep)」ではなく「革新性(innovative step)」で判断すると規定され、革新性は、進歩性よりも緩和された要件になっています。でも、日本語で見比べると、「革新」した特許の方が「進歩」した特許よりも大発明を扱っているように感じられませんか?
しかしこの制度、オーストラリアにおいて2000年に導入されたものの、既に段階的な廃止が決定されており、今年の8月26日以降、新規の出願ができなくなります。廃止の理由としては、革新性基準が低くて出願し易い一方で無効化が極端に困難であり、これに乗じて権利者有利の戦略的な利用が多数行われていること、また、補正できる期間が長くて権利範囲が登録後に変動し得るので法的に不安定であるなど、第三者の監視負担が高く、権利者に非常に有利な制度になってしまっていたことなどが挙げられています。
一方、我が国の実用新案制度ですが、無審査で登録されるものの、訂正の回数や内容に制限がかけられ、また、権利行使の際には、技術評価書を得てから警告を行う必要があるなど、オーストラリアの制度に比べると第三者に配慮した制度になっているのかなと思います。
また、その他の国を見てみると、オーストラリアのように、日本の実用新案とは異なる特有の内容を含む実用新案を採用している国があります。例えば、中国では、同一の発明であれば特許出願と実用新案の両方を同日に出願できるようになっています。そうすることで、発明を特許で保護しようとする場合において、特許権を取得するまでの期間を実用新案で保護できるようになり、特許権を取得できなかった場合であっても実用新案権で自社の製品等を保護することができるようになります。
このように見ていくと、特許制度よりも実用新案制度の方が、その国々で特色が出ているような気がしますね。

(日本弁理士会中国会 弁理士 大西 渉)

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