「商品開発の成功の要件としての知財」
2021.12.07
特許大企業とも競合する中堅企業で長年、主としてR&D、商品開発及び知財を担当していた中で大企業に対抗する商品開発の成功の要件を体得した。
それは、商品開発の成功のためには下記の連立方程式を満たすことが必要であるということである。
その第1の式は事業力+商品力>一定値という式である。事業力とは販売力や生産力等であり、大企業は一般的に大きな事業力を有している。
事業力の小さい企業は事業力の大きい企業に対抗するために事業力が小さい分だけ商品力がすぐれた商品を開発しなければならない、という意味である。
事業力の大きい企業の商品の商品力と同程度の商品力の商品を開発していたのでは事業力の小さい企業は勝ち目がない。
第2の式は事業力+知財力>一定値という式である。
商品販売力等が大きい、事業力の大きい企業に対抗するためには事業力の小さい分だけ知財力で事業力の大きい企業の生産・販売を抑止しなければならない、という意味である。
知的財産権は事業力の大小というあらかじめ決まっている格差を是正する機能を果たして事業力の小さい企業でも初めから諦めることなく努力によって成功する機会を与えてくれる貴重な手段と考えることもできる。
すなわち、中堅、中小企業は事業力の不足の分だけ商品力の優れた商品を開発し、かつそれを知財で守れば事業力の大きい大企業を相手にしても商品開発そして事業を成功させることができる可能性がある。
昔、家庭用餅つき機の開発において中小企業が大企業に惨敗したのを身近で見た。後発の事業力の強大な大企業は数年間に数百万台販売し、先発の中小企業は試供品も含めて数年間に250台しか出荷できずに撤退した。
当該中小企業の家庭用餅つき機は大企業のものと比較して商品力は同程度でかつ知財で守られていなかったのである。すなわち、前記連立方程式を満たさない商品開発だったのである。
(日本弁理士会中国会 弁理士 保坂 幸男)