知財コラム

「戦争と特許」

ロシアがウクライナに侵攻して 2 カ月半になり、欧米の国々や日本が経済制裁を強める中で、ロシアも対抗措置をとっています。その中に特許権の取扱いについての措置が含まれていて、特許の世界にも戦争が影を落としています。
JETRO の発表によれば、3 月 7 日にロシア政府は、日本を含む非友好国の者が保有する特許権について、国家安全保障等のために特許権者の同意なく特許権を実施することをロシア政府が許可した場合に、実施者が支払う対価をゼロにすることにしました。非友好国の特許はタダで使える場合があるという、少々乱暴な話です。友好国であるかどうかによって特許権の扱いを変えるのは、知財に関する国際条約であるパリ条約に違反するのではないかとも思うのですが、大きな争いの中では何でもありなのでしょう。
昔話になりますが、以前私が勤務していた会社が 60 年前に英国の会社に訴えられたことがありました。その発明が英国出願されたのは 80 年以上前でしたから、通常であれば権利満了している時期だったのですが、第二次大戦中に日本に手続きができなかった期間を延長する戦後措置令によって、権利期間が 7 年半も延ばされ、訴えられたのでした。
今も昔も戦争は経済に影響を与えるものであり、特許も例外ではありません。折しも今国会では、いわゆる経済安全保障法案が審議されていて、同法が成立する可能性が高い状況です。同法が成立すれば、安全保障上機微な発明の特許出願は公開が制限されることになりますので、出願された発明を全て公開するという原則がついに変更されそうです。実のところ、主要国では既にそのような発明は公開されていませんので、日本が普通の国になるということですが、ウクライナ侵攻によってタイムリーな法案となってしまいました。
特許屋の私としては、有用な発明をした者が、全ての国で公平に経済的利益を受けられるような世界であってほしいと願うばかりです。

(日本弁理士会中国会 弁理士 中務 茂樹)

バックナンバー

知財コラムの一覧に戻る