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「円安と手数料との関係」

2022.07.20

今年に入って円安が加速し、約24年ぶりの水準になっています。円安になると輸出産業にはプラスに働きますが、輸入品価格が上がるため私たちの生活にダイレクトに影響を受けてしまいます。
特許の世界でも円安による価格上昇があります。PCT 国際出願を日本で行う際には日本円で手数料((1)国際出願手数料、(2)送付・調査手数料)を支払いますが、(1)国際出願手数料が円安により価格上昇するのです。これは、スイスのジュネーブに管理・運営業務を行う国際事務局があり、スイスフランの単一通貨で国際出願手数料が定まっているので為替変動でたびたび手数料が改定されるのです。国際出願手数料は、10年ほど前の円高水準の頃は約11万円でしたが、現時点では179,000円です(30枚を超えると 1枚につき2,000円加算。オンライン出願すると40,400円が減額されます)。
一方、(2)送付・調査手数料は、日本国特許庁が国際調査を行う対価として徴収する手数料なので為替変動による影響を受けません。しかしながら、今年の4月1日からついに手数料が改定されて 8万円だった送付・調査手数料が16万円と倍額になりました。元々、他国が徴収する調査手数料と比べると日本は低額でしたが、現状の円安水準の時期と重なってダブルパンチです。
日本の企業等であれば、通常、日本語でPCT国際出願の書類を作成するかと思いますが、英語で作成した書類を日本国特許庁に提出することもできます。その場合、国際調査機関を日本国特許庁ではなく、欧州、シンガポール、インドのいずれかの特許庁を選択することが可能です。欧州特許庁を選択した場合、調査結果が肯定的であれば、その後に欧州で権利化する際にスムーズに特許性が認められる可能性があるかもしれません。インド特許庁を選択した場合の調査手数料はかなり格安です(法人 16,600円、個人 4,200円)。インド特許庁を選択したことはありませんが、どのような調査結果が得られるか興味があります。
なお、PCT国際出願は国際段階で継続しているだけですので、権利化を希望する国に移行手続をその後に行う必要があります。現地代理人に現地通貨で支払うことが想定され、ここでも円安の影響を受けることになります。
スタートアップや中小企業を対象とした外国出願支援事業が各都道府県や日本貿易振興機構(JETRO)でありますし、PCT国際出願に関する手数料についても軽減措置や交付金制度がありますので、該当する場合にはぜひ活用をご検討いただければと思います。

(日本弁理士会中国会 弁理士 伊藤 俊一郎)