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「甘酒の違いとデザインの使い方」

2017.07.19

暑い日が続きます。こういうときは少し冷やした甘酒を飲むと元気が出てきます。甘酒は本来夏の飲物なのですが、どういう訳か冬と勘違いされています。米麹から造る甘酒は、必須アミノ酸が多く含まれているので、体がばてる夏に飲むのは理にかなっています。人類は氷河期に誕生したので寒さには強いですが暑さには比較的弱く、クーラーのなかった時代には夏に死人が多かったのも頷けます。始めて関東で甘酒なるものをいただいたときにはびっくりしました。向こうでは酒粕を湯にとき砂糖で調味したものが甘酒です。
さて、不況になるとデザインが発達するといわれ、デザインの語義にはだますというニュアンスが含まれます。だまされて商品を買ってしまうと腹立たしいですが、デザインに含まれるダマスは少し魅了的なニュアンスも含まれる感じがします。関東の甘酒はデザイン?されたものでしょうか。
デザインを保護するのは意匠(いしょう)です。ボールペンの形状でも靴でもアイスクリームの様な食品形状も、同一物として量産できるものであれば総て登録対象です(逆に自然物や一点ものは登録になりません)。完成品でなくてひげそりの替刃のような部品でも、スプーンの絵柄のように取り外しできない物品部分でも、椅子・テーブルセットのように全体として統一感のある共通デザインも登録対象です。
登録要件として「美感を起こさせるものである」(審美性)必要がありますが、美とは何か、は、学者さんの間でも永遠のテーマであるようで、トナーカートリッジのような無味乾燥(失礼)な物品であっても登録されます。
意匠権の使い方として、互換性排除があります。意匠権は「登録」から20年間保護され、「出願」から20年で満了する特許権に比べて権利が長いという特徴があります。また、技術とは関係ないので外形が異なれば機能は同じでも意匠権を取得することが可能です。例えば、プリンタトナー粉末の特許権が切れてしまった場合には、自由技術となりますのでトナー粉末そのものでは第三者の製造販売を禁止できません。ただし一般的な流通市場ではトナー粉末単体では売買されず、トナーカートリッジに詰めて販売されます。ここに着目すれば、カートリッジの形状(およびこれに勘合するプリンタ本体の収容構造)を20年ごとに変更し、その都度カートリッジ形状の意匠登録を受けていけば、トナーそのものを長期間にわたり間接的に保護できることとなります。
いずれにしても、なんとしてもこれを保護したいという場合は弁理士に相談してみて下さい。今回紹介したような意外な切り口で活路があるかも知れません。

(日本弁理士会中国会 弁理士 田辺 義博)