「ブラボー! Unexpected Results」
2022.12.07
特許12 月 2 日の明け方に「日本、逆転した!」の声で妻に起こされました。一番おいしいところは見られませんでしたが、その後のスペイン戦を楽しむことができました。
さて、特許出願の審査では「進歩性」が要求され、公知の発明に基づいて容易に発明できるようなものは特許されません。
進歩性の判断手法については、特許庁の「特許・実用新案審査基準」に詳細に説明されていますが、その判断に影響を与える要素として「有利な効果」というものがあります。引用発明と比較した有利な効果が「技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果」であった場合には、進歩性を肯定する有利な事情として参酌されることになっているのです。
私の専門は化学なのですが、機械や電気などの技術分野とは異なり、化学は効果の予測が困難な技術分野です。そのため、それほど特別な組み合わせでなくても、実験データを示しながら「混ぜてみたら驚くべき顕著な効果が得られた」ことをうまく説明できれば、特許されます。したがって、特許出願する際には提供された実験データを眺めながら「顕著な効果」を掘り出そうと、顧客とあれこれ議論します。
このように、日本の審査では「顕著な効果」という言い方をしますが、米国の審査では「Unexpected Results(予想外の結果)」と言います。一般に、日本に比べて米国では進歩性の判断時に効果を参酌しない傾向にあるので、米国の審査では苦労することも多いのですが、ドイツに勝って、コスタリカに負けて、スペインに勝ったのですから、絶対「Unexpected Results」と認められるだろうな、などと思いました。
この原稿を書いているのはクロアチア戦直後なのですが、クロアチアと大接戦したのはもはや「Unexpected Results」ではなさそうです。2026 年に開催される次回のワールドカップでは、日本代表のさらなる「Unexpected Results」に対し、大声で「ブラボー!」と叫びたいものです。
(日本弁理士会中国会 弁理士 中務 茂樹)